2011/8/15 大井川鐵道 乗車記

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まえおき:コミケだけで夏が終わるのはあまりにもアレゲ
→東の方に来たんだからどこかそのへん行こうぜ
→(大阪から見て)東の方でテツなスポットといえば大井川鐵道
→金谷近辺に泊まって朝から乗ろうぜ!

5レ 07:36金谷 -> 千頭08:49

とりあえず金谷の駅に着いて、井川線千頭始発に間にあう列車を探しておいた。
…おいたのはいいのだが、いざ着いて目の前に居る車輌を見たら南海高野線 21000系

さっぱり旅先の気がしない。 ※元旧塗色時代からの南海ユーザー

さすがに製造されてだいぶになって、南海で廃車されたものを引き取っただけあって、外板の痛み、塗装の痛みが激しい…サビサビでございます。
こりゃまあ仕方ない、普通鋼製車輌の限界です。

とりあえずこれに乗って井川に急ごう!あれ、前からの対向列車にも何か見覚えが…ペロッ、これは京阪 旧3000系

さっぱり旅先の気がしない x2 ※元おけいはん、しかもモノは8050系として現役

さすがにここまで関西臭がする鉄道を見たことがない。ここほんとに静岡?
まあ、いいかげんこんなもんで打ち止めだろう…あれ、おかしいな、なんか見覚えのあるオレンジと青のやつが…近鉄 16000系

さっぱり旅先の気がしない x3 ※現役近鉄ユーザー、しかも16000系は毎日通勤で見てる…

えーと。とりあえずここは難波と淀屋橋と上本町を足して3で割ったところと理解した!
なんか新金谷の奥に近鉄の旧車が居たような気がするけれどそろそろ頭が痛いので見なかったことにしておこう。
関西のみなさん!こんなアレゲ天国見逃す手はありませんよ!

当日の井川線時刻表

timetable.png(13878 byte)

201レ 08:55千頭 ->

千頭到着。井川線専用の中間改札を抜けると、やたらとかわいらしいサイズの赤い客車と機関車が居ますね。
…あれ。その割にレールの幅変わってないぞ?

通常、山奥に向かうトロッコで線路を引くのもかなりギリギリなところや、地域の足としてそれほど高速・大量輸送を必要としない所では、昔は「ナローゲージ」と呼ばれる、レールの幅1mにも満たない…だいたいは762mmやそれ以下の規格を使ってかかる費用や必要な設備の規模を節約しています。
有名な例を一つ挙げると、前者は黒部峡谷鉄道、後者は三岐鉄道北勢線で見ることができます。あまり現物を見た方はいないかもしれませんが、やたらと貧弱な線路に見えて一発で区別できます。

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撮影:hinoharu/奥大井湖上 DD20形ディーゼル機関車外側のレールが走行用(内側は脱線ガード)

しかしここは1,067mm(1m)。少なくともレールの幅だけはそのへんのJR線並みです。ただし、上にのっかってる車体は「ナローゲージ」以下の最大1850mm(1.85m)幅なので、なんとも不釣合いなちんまいのが線路の上に乗っかっております。(参考:JR=3000mm 近鉄内部・八王子線=2100mm)

-> アプトいちしろ09:39 ->

20km/h程度でゆるゆると進む列車は、アプトいちしろ駅に入ります。昔は「川根市代」という駅で、実際に旧駅の跡も近くにあるわけですが…さてこの山奥の駅に似つかわしくないカタカナ語がついた理由は何でしょう?

解は後で行く長島ダムと、そのダム建設による線路つけかえにあります。

ダム上の冠水しない高さまでまっしぐらに登る道路を車で走ることを想像してみてください。ゴムタイヤですからなんとか上がってくれますが、エンジンを唸らせてもゆっくりとしか登らない車を想像できると思います。
ましてや鉄の車輪で走る、いくら小さいといえど重量級の車輌が動く鉄道は、たとえ坂を登るに足りる動力があったとしても、ツルツル滑ってお話になりません。

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撮影:hinoharu/長島ダム 電柱をほぼ垂直になるように撮った…はずなんだが。

この問題に対する解法はだいたい3つ。

  1. 線路を遠回りさせて距離をかせぎ、なるべく坂をゆるくする
  2. 滑って落ちたりしないよう特殊な装備をてんこもりにした車輌でがんばる
  3. 滑らないようケーブルで引っ張ったり、ギアをかみあわせたり…

井川線はこの問題に、3番目のド直球な解法で挑みました。線路の中心に置いたギザギザの板と、専用の電気機関車のギアを噛みあわせて登ります。これをドイツ人開発者の名前を取って「アプト式」と言うわけです。

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左=撮影:hinoharu/長島ダム-アプトいちしろ 90‰・1000m行って90m登ることを示す標識
右=撮影:hinoharu/アプトいちしろ 中心がギザギザの板、向こうから来るのがギアつきの専用電気機関車ED90形、連結中

なお、専用の電気機関車は、以下の条件で連結します。

これを満たす最小構成は、
←坂の下 form1.png(737 byte)
[電気機関車] - [ディーゼル機関車] - [客車] - [客車] - [客車] - [客車] - [客車]
客車の数は需要によって変わりますが、だいたいこんな感じです。

例えば、何かの都合でディーゼルが一番前に居る場合は、
←坂の下 form2.png(799 byte)
[電気機関車] - [客車] - [客車] - [客車] - [客車] - [客車] - [客車] - [ディーゼル機関車] - [電気機関車]
と、こうしないといけませんね。
機関車が合計3両居ますが、ちゃんと一括制御できるよう客車にも制御用の電線を引っ張ってあります。

…わざわざ説明するということは、後でこれがキーになる何かが起こるということです。はいここ伏線ですよー。
ヒント:上の走行写真はなんかヘン

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撮影:hinoharu/アプトいちしろ 井川方先頭

では、いざ参ろうか。

-> 奥大井湖上09:57

現場でも説明魔人になっているうちに、次の長島ダム駅で即電気機関車を切り離し、列車は奥大井湖上へ。
これほど名前と立地が一致している駅もなく、視界の内270度ぐらいが山の中のダム湖
蛇行した川の半島状になった部分の両側に橋をかけて、真ん中に何を考えたか駅を作ってしまったという。
一応写真はあったはずですが、こんな湖の上感、パノラマ写真としてつなげるように撮らないといけないので、皆さん現地に行って直接お確かめ下さい。

当然のようになんにもない駅ですので、皆さんここでくれぐれも降りて次の列車を待とうとか思わないように。1本後は1~2時間後ですよ!

402レ 10:20奥大井湖上 -> 長島ダム10:32

さて、順調に山登り続行…かとおもいきや、いきなり戻ります。
そう、1本後は1~2時間後ですが、逆向きの列車を加えると待ち時間はその半分になるわけです。
hinoharu氏が気づいて旅程を組んでいたのを見て感心しました。普通戻るなんて考えないですからね。

せっかくですから、アプトだかアウトだかわからんやつの原因になったダムも見ていきましょうか。

…おや。対向列車はディーゼルが坂の上側なので電気機関車2台つなげてますね。
ちゃんと下になるように組み替えてやればよさそうなものですが、まあ何かの都合でこうなっているのでしょう。

さて、ダムです。とりあえず上から見てみましょう。

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撮影:hinoharu/長島ダム堤体袖管理通路階段より(一般開放)

なんだかよくわかりませんね。1時間ほどあるし、下に降りてみましょうか。登るの大変…うぐぐ

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撮影:hinoharu/飛沫橋中央より

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撮影:hinoharu/岸より

Nice Dam.

なかなか気合を入れて作られた良いダムです。うむ。男前だ。

…誰ですか、ながしまダムが水をながしまーすとか言ってる人は。

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撮影:hinoharu/ダム堤体のすぐ下

下にはダムができる前の旧線、第18号トンネルが残っていました。実はダム下流側にもっとあって遊歩道になってます
現在線の長島ダム駅はダムの上、旧線はダムの下。ということは、戻る時にアプト式の設備で乗り越えた高さをまるごと体感できるということです!ああ、これぞ体験学習!何か違う気がする

203レ 11:34奥大井湖上 -> 井川12:26

ぜーはーぜーはー。うぐぐ…これはきつい。
ぎりぎり列車に間に合って、今度こそ終点を目指します。

ハイライト1

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撮影:hinoharu/尾盛駅 道なし家なし人な……あれ?

途中のハイライトその1、尾盛駅です。
道なし家なし人なし(略してみいひ)
駅の存在価値が根本から揺れるレベルのシロモノですが、元はいちばん上流の井川ダムの建設作業者が住んでいた一角でした。

誰ですか、お(お)もり駅なのにホームは小盛りとか言ってる人は。

ちなみにこの駅、道すらない…少なくとも現役の道路、遊歩道などはないにもかかわらず降りて乗るだけ以外の利用客はゼロではありません[LINK:山さ行かねが]。恐ろしいことに。

ハイライト2

そして、列車は関の沢橋梁へ。

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撮影:hinoharu/関の沢橋梁 客車の窓から垂直に下を見下ろす

たまひゅん。
男性諸氏しかわからない表現、失礼しました。要はあの冷たい感覚です。
深い谷にダイナミックに架けられた鉄橋は、登山鉄道ならでは。
以上、道中のハイライトその2でした。

終着駅 井川駅

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撮影:hinoharu/井川駅前広場…?

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撮影:hinoharu/井川駅構内 右はかつての井川ダム建設専用線終点へ…

1面1線のホーム、廃専用線へのトンネル、そして使われない側線が2本。
井川の集落から少し離れた谷間にあるその駅は、十分に秘境の雰囲気が出ていました。

252レ 12:46井川 ->

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撮影:hinoharu/井川駅構内 ディーゼル機関車横

着いた列車でそのまま折り返し、千頭を目指します。
こんな険しい山の中まで、後ろから押してくれた、ちまっこいけど力持ちなDD20型ディーゼル機関車が今度は先頭です。

残念ながら今回は2号機さんでしたけどね。
さて、帰りもよろしく頼んます。
あ、昼ごはん食べながらだね…。

がたごと揺られてまどろむうちに、往路で見て来た長島ダムが見えてきました。
さて、さすがに力持ちディーゼルさんでも下るのでさえ危険な場所。
行きと同じく、帰りも助っ人さんを呼ぶことにしましょうか。

…だが、この後。
おそらく誰もが冒頭から期待しているトラブルが
機関車たちと参加者3人を襲う…

-> 長島ダム駅 13:42から11分間

通常操作

往路で適当に端折った、長島ダムでの電気機関車の操作を見てみましょう。
長島ダムは対向可能な2面2線の駅です。坂の下のアプトいちしろは電気機関車の車庫があるせい?で他にたいした設備が作れず、1本のみの棒線駅なので、すれちがいは全部長島ダムで行います。

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まずはアプトいちしろから登ってくる列車を待ちます。
おっと、今回もまたディーゼルが前の変則パターンのようですね。電気機関車が前後をサンドイッチしています。

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実は電気機関車用の電線は、アプトいちしろ - 長島ダム間しか引いていません。当然ながらその先には行けないので、前後についていた電気機関車を切り離します。
おや、前の電気機関車(ED901)が、行く手を阻んでしまいましたね…

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そのまま本線に居座るわけにも行きませんし、別にほったらかすための引き上げ線もありません。
仕方ない、なら反対行きにつなげで戻ろうか
この「反対行き」がちょうど私たちの乗る列車でした。基本通り、ディーゼル機関車が坂の下なので、本当は坂の上のED901は要りません

トラブル!

連結、ブレーキ試験よし。
さて、坂を下りましょうか。
一番先頭のED902を操作すると、すべての動力車がそれに追従します。ディーゼル機関車DD20形はおやすみですけど。

うん、追従します。きっと。しますよね。え?ん?えーと??

所定時刻になっても出ない列車。
慌ただしく前後に走る車掌さん。
飛び交う無線、動かない機関車……

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進行方向後ろ側(山上側)、ED901が加速指令に応答しません。
さっき登ってきた時はちゃんと前後きちんと協調していましたよねえ。うーん。

も、もしかして、今私達が乗っているこの客車が原因…?

と、とりあえず、こんな状態では、急坂を下るのはさすがにマズイです。
つなげた電気機関車が客車に負担をかける原因になるとかいう事態は避けなければ。

幸い、坂の上のED901は、ディーゼル機関車が下についているこの編成には要らないので、仕方ないからはずしてとりあえず置いておきましょう。
急いで再度切り離し作業をし、出発!

oigawa5.png(33356 byte)

残されたED901の行方を、私達は知りません。
…まあ、たぶん機関車側には異常はないだろうという読みで、単機で追っかけたんでしょうけど。

-> アプトいちしろ 13:54+11 -> 千頭 14:32+?

さて、予想外のトラブルで11分も遅れてしまいました。
今から登る対向列車への影響はともかく、千頭-金山の本線の列車ときちんと接続しなければいけません。
接続列車への接続待ち時間も、同じ11分……

距離11.4km、所定48分で走りますから、だいたい平均15km/h(駅停車時間含む)
これを37分にするには、だいたい平均19km/hぐらいで走れば良いことになります。

はい。平均して数字にするとたいしたことはないですね。しかもやたら遅い。
…本当に?

見方を変えてみましょうか。千頭まで残り7駅間、うち1駅間はアプト式で厳しく速度が規制されているので、実質使えるのは残り6駅間。
6駅間で、だいたい普段5~8分かけて走るのを、2分近く縮めないとダメ、という事態です。

回復運転、しましょうか。

井川線D トロッコD

ガコガコガコ、ドドンドドン、ギイイィイィイ…

普段20km/hぐらいでゆっくり走る時にも、たいがい硬質な乗り心地でした。実は足回りはcトキ200形=貨車の使い回しですから当たり前ですけれど。
それが、現在は回復運転中。おそらく井川線の制限速度一杯でかっ飛ばしてます。
体感でざっと30km/hぐらいでしょうか。

……電車でD、大井川ダウンヒル? 電車じゃなくディーゼルですけど

結局、千頭到着までに、11分延が2分延まで縮まっていました。

1004レ 14:58千頭 -> 金谷16:25

さて、先程説明した11分乗り換えの22列車に乗れそうですが、とりあえずパス
後続の1004列車に乗りたいと思います。

資料館でも見に行くのかって?違います。
んじゃ、別の車輌に乗りたいからって?それです。

まあ、これこそ有名なネタなので、あまり引っ張らずさっさと行きましょう。

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左=撮影:hinoharu/千頭 本務機 C10 8
右=撮影:hinoharu/千頭 補機 E10 2

大井川鐵道に行くとたいてい見ることになる、何事も無かったかのように、ほぼ定期列車としてホームに居るSL。冬場のみ週5日運転に減りますが…
乗車には別途急行料金(!)が必要ですが、定期券所持者は免除とか。そんなことを決めなければならないほど定期的に走っています。

急行料金なんて、今時珍しいにも程がありますが、普通列車より20分遅い急行列車なのでくれぐれもお間違いなく。

編成表:←金谷 [本務・SL/C10 8逆] - [旧客] - [旧客] - [旧客] - [旧客] - [旧客] - [旧客] - [旧客] - [補・電機/E10 2] 千頭→

現在、千頭にしか転車台がないため、金谷方へ行く列車は全部逆を向いていますが、新金谷にわざわざ転車台を新設して2011/10から常に正面向きになるとか。
こ、この時代に新転車台っすか!?こいつ、本気だ……

残念ながら、時間的に坂下り運転の列車なので、それほどSLが動いてる感は無いのですが、テツなら旧客だけでも腹いっぱいですな。暑いけど。

たびのおわりに

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撮影:hinoharu/金谷

お疲れ様でした。これにて大井川鐵道の旅は終了です。
ここで紹介したネタは、本当にごく一部です。これだけネタ満載なところ、1日ではたぶん足りません。2日~3日用意して、ゆっくりするのをおすすめします。
幸い、関西からも関東からもそれなりの時間で着けますしね。

これにて旅行記もおしまい。お後がよろしいようで。

あとがき

帰りにこだま666号が10分延でした。呪われている…?

謝辞

参加者:イチボシ(http://1boshi.fc2web.com//ヒノハル(http://railway.nanika.jp/)/ぽな

え: rougakai DD20形,ED90形 (pixiv/195412)  イチボシ,FA-X,TJ(アイコン)

ネタにつきあってくれた人々に感謝を

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